まどろみ3秒前
一番端の窓側の席で本当によかった。そこだけ、私は運が良かったと思える。
でも、もうすぐ席替えになるのかな。意味ないや、と自分の中で微笑した。
雨の音がする。僅かに、雨の匂いもした。
「雨ってまじうざいよなー?」
「な。部活内練キツいし嫌だわぁー」
「昨日から降ってるもん。全然止む気ないし、このまま大雨警報でもなってくんないかな?学校休めるじゃん」
この雨が昨日から降り続けているということを、私は知らなかった。
久しぶりに学校に来たが、どうにも変わるのは天気くらいで、学校の風景や人の髪や顔も意外と変わっていないものだった。
「なあ。あんな寝てる豚がよく学校来れるよな?思わね?あのサボり寝坊女が」
「まじそれな。てか、普通にさっき笑顔で男子と喋ってんの笑えた。あ、狙ってんじゃね?」
「あーそゆこと?きも」
「おい言い過ぎ。聞こえるじゃん。あいつが先生に言って内申下がったらどうなんだよ」
今日も、後ろの席ら辺で吐き捨てられる可哀想な言葉たちに、聞こえないフリをする。
学校に来るたびそんなこと言われるようになっちゃったなぁ、いじってくれたらいいのに、と呑気にあくびをして、教室を見渡す。
笑いながら友達と話す人、私と同じくぼーっとしている人、読書している人、暴れまわる男子軍団、休み時間でも勉強する人…、
あーそっか。もうすぐテストがあるから、それに向けてか。なんて、他人事だった。
私は、今の学習内容を全く理解していない。あまり学校に来ないから、今日聞いていた授業も、耳に入って耳から出ていく。
賑やかな教室に、私だけ猛烈な孤独を感じた。