まどろみ3秒前

あんまり声は覚えていないけど、多分、男の人。

こんな男の人と寝てるみたいな気持ち悪い夢、恥ずかしくて絶対誰にも言えない。


―今夜は、もうひとつ夢を見た。いつもと違った夢だった。


私は、溺れていた。水の中にいるように、息が出来なくて体が酸素を欲している。どんどん、私の体は沈んでいく。苦しい、苦しい。

息が出来なくて、このまま沈んでいったら、私はもっと苦しい。そう思うと、辛すぎて涙が出そう。水の中だから、涙は出ないけど。


「っや…」


苦しい。でも、助けてくれる人はいないだろう。こんな、水の底にいるんだから。私は、息が出来ないまま、沈んでいく。


まるで、いつもの私みたい。


バカみたいに足掻いて足掻いて、結局は沈んでいくのに、全部がどうでもよくなって笑う。どうでもよくなるから、笑ってしまう。


「おはよとか、大っ嫌い…」


起きても勉強はしなきゃだし、人間関係も辛いし、本当の自分がわからなくなって自分が情けないし、全部どうでもよくて嫌いなのに。辛いことばっかりなのに。

朝も嫌いだ。夜も嫌いだ。人が嫌いだ。








ゆっくりと、目を開く。

視界は、何度も見た私の部屋の真っ白な天井だった。

窓からは、ポツポツと雨の音がした。

寝る前の天気予報では、次の日は晴れだった。でも、今は雨が降っている。私が望んでいた、窓から差した朝陽は見えなかった。
< 58 / 426 >

この作品をシェア

pagetop