まどろみ3秒前
―タッ
靴の音がする。どこかの雨宿りに来たカップルかもしれない、サラリーマンかもしれない、おじさんかもしれない。
私は、願った。
目を開けた先に、いつだって誰かがいてくれたら…
「おはよ」
はっと目を開ける。
「っあ…」
「もしかして、寝起き?」
彼は、まるで朝の太陽のようにふふっと笑った。こんなにも暴風雨の中、こんな小さな公園に、打ち合わせもせずに会えるなんて…
何も言えない。
驚きと、少しだけ、少しだけの喜びみたいなものが混ざりあって、魚のように口をパクパクさせることしか出来ない。
彼は、自分の差していた傘を閉じて、私に近づく。今日は制服ではなく、私服なようだった。ポタポタと傘からは水が落ちる。
「また目、うるうるしてんの」
高い身長の彼は、ちょっとしゃがんだだけで私を追い抜かす。
私は全力で首を横に振ったが、彼の目を見ると、首は止まってしまった。
「…だって…4日間も寝てたんだから…」
段々と視界がぼやけてくる。流石の彼も、「4日も?」と驚いている様子だった。彼は真剣な表情になって、ひとつ呼吸をした。