まどろみ3秒前
「ぜぇーんぜん大丈夫!ただの寝坊だし~」
「えー寝坊!?それで学校休み!?アラームしてないの?!」
「してるしてる」
「えーなにそれ」
小鳥は笑う。私も笑みを浮かべて口角を上げて笑った。うまく誤魔化せてよかったと思えたことが、どこか胸が苦しかった。
この冗談という誤魔化しも、いつかは効かなくなるのだろう。それでも、別にいい。
「あ、クラス離れたけど、全然来てくれていいからね!ほんと来て!!」
「あーうん、また行く絶対」
また、は叶うことなのだろうか、なんて思った。
小鳥は、可愛いし面白いし話しやすいし、他の友達もいるのだろう。
どうして、寝坊野郎で、嘘つきで面白くもない私なんかと帰ってくれるのか、考えてもわからない。いや、考えたくなかった。
「待ってるから。ってか私も行くしね」
「ありがとう」と照れくさく笑ってみる。
今まで、来てくれたこと、あったっけ。
そんな記憶はない気がする。
すると、ふと誰かの声が聞こえた。
「また小鳥ちゃんと帰ってんじゃん。よく小鳥ちゃんも喋ってくれるよね?」
「ね。うちら頑張って毎日学校来て授業とかテストしてんのにさ?あんなのサボりじゃん」
「わかる。ムカつくよねぇー?やっぱ小鳥ちゃんって、可愛いし心広いんだね、優し~」
小鳥は平然と、最近の学校生活について私との会話の空白がないように話してくれる。
小鳥は、全く気付いていないようだった。だけど、小鳥の耳には届いていると思う。小鳥だって、私みたいに嘘をついている。
それすらも考えないようにして、小鳥には申し訳ないけれど私は、足の速度をバレないように速くした。