まどろみ3秒前
ガチャと扉を開ける音と共に聞こえてきたのは、「にゃあ」という猫の声だった。
びくっと肩を震わせてしまった。朝くんは、猫を抱っこして私の隣にまた座った。
大きな猫だった。茶色いような薄いオレンジ色で、あの日に見た毛の色と同じだ。見た目でわかるふわふわな毛並み。くりくりと丸い目は、透き通っていて、私が映っていた。暴れもせず、じっと私を見つめていた。
猫の手というのは、本当に可愛らしい肉球だ。爪が鋭く長くて怖かったけど、朝くんが抱き抱える猫の姿を見れば、その怖さは次第に溶けていった。
すると、ぷっ…と彼は笑い始めた。
「な、なんですか」
「いや、猫と見つめあってるから」
「…別に、」
「猫、怖かったんでしょ。克服成功?」
わかっていたのに、猫を私に持ってくるとは…なんてこの人は最低な奴なんだ。
「かわい」
猫に対して言っているのだろう。クールで綺麗な顔つきの朝くんが言っているのが、可愛らしかった。朝くんも、猫も、なんか可愛い。
「男の子?」
「そ」
「じゃあひるくんか」
朝くん、ひるくんと順番に指を指して言った。朝くんが猫の首を指で掴むと、猫は、ゴロゴロ…と鳴いていた。