まどろみ3秒前

「…なんか、意外ですね。朝くんが、猫を抱っこして可愛いとか言ってんの。クールで大人っぽい顔つき、してるから」

「あー、よく言われる」


彼は、少しだけ寂しそうな顔をした。

私は挽回しようと、口を開く。


「あ、いや別に、朝くんはクールな顔してるけど、朝くんは頭おかしい人なのもわかってるんで。なんか、太陽みたいな明るさ持ってるのも。全然、クールじゃないから」


カバーしきれたかと心配したが、「は?5点野郎に言われたくないんだけど」と無表情で言われたあとに、笑われた。少し安心した。

猫は、目を瞑って静かに体を上下に揺らしている。


「猫、寝た」

「…いいな」


彼は何故か、羨ましそうな目付きで猫を見ている。見たことない、彼の表情。

いいなって?と思わず聞くが、「なーんもない」と首を振られ返されただけだった。


「さ、もう夜遅いし、送っていきます」

「あ、いやそれは大丈夫、です。迷惑だし」


笑みを浮かべて立ち上がると、長時間座っていた足の痺れがあったのか、倒れかけてしまった。

すぐに彼が立ち上がって、受け止めてくれた。なんて、私は迷惑かけ放題な奴なんだろう。


「ごめんなさい、ちょっと痺れちゃって…」


離れようとした。なのに、体が、動かない。
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