私と彼の溺愛練習帳
「私を置いて行って来ても良かったのに」
「嫌だ」
閃理は雪音の手をぎゅっとにぎる。
「絶対に置いて行ったりしない」
閃理が鋭く雪音を見た。
「……怒ったの?」
まただ、と雪音は戸惑う。閃理が少し怒っている。
だけど人間なんだから、怒るときがあっても当たり前だ。
「怒ってない」
閃理は怒った声で返す。雪音は戸惑った。そんな彼女に閃理は苛立ったようだった。
「雪音さんは平気なの? 僕が行っても」
「だって、ちゃんと帰ってきてくれるんでしょう?」
閃理は驚いたように立ち止まって雪音を見た。
「閃理さん?」
「そう……だね」
閃理は急に雪音を抱きしめた。
「ちょっと!」
雪音がとがめるが、閃理はぎゅっとして雪音を離さない。
「ちゃんと帰る。雪音さんの隣が、僕の帰る場所だ」
なにかを求めるような声だった。
だから雪音はそれ以上なにも言えなかった。
「そうだよ」
雪音はぎゅっと彼を抱きしめ返した。
周囲の人にじろじろ見られたが、雪音はかまわず、閃理の気が済むまで抱きしめられていた。
翌日の雪音は遅番だった。
夜八時を過ぎたころ、閃理がふらっと店にやってきた。
「どうしたの?」
「用事があって、ついでに寄ったの。仕事中の雪音さんも素敵だよ」
「やめてよ」
化粧も剥げているだろうし、疲れてくたびれている。この姿をほめるのは閃理くらいだ。
「嫌だ」
閃理は雪音の手をぎゅっとにぎる。
「絶対に置いて行ったりしない」
閃理が鋭く雪音を見た。
「……怒ったの?」
まただ、と雪音は戸惑う。閃理が少し怒っている。
だけど人間なんだから、怒るときがあっても当たり前だ。
「怒ってない」
閃理は怒った声で返す。雪音は戸惑った。そんな彼女に閃理は苛立ったようだった。
「雪音さんは平気なの? 僕が行っても」
「だって、ちゃんと帰ってきてくれるんでしょう?」
閃理は驚いたように立ち止まって雪音を見た。
「閃理さん?」
「そう……だね」
閃理は急に雪音を抱きしめた。
「ちょっと!」
雪音がとがめるが、閃理はぎゅっとして雪音を離さない。
「ちゃんと帰る。雪音さんの隣が、僕の帰る場所だ」
なにかを求めるような声だった。
だから雪音はそれ以上なにも言えなかった。
「そうだよ」
雪音はぎゅっと彼を抱きしめ返した。
周囲の人にじろじろ見られたが、雪音はかまわず、閃理の気が済むまで抱きしめられていた。
翌日の雪音は遅番だった。
夜八時を過ぎたころ、閃理がふらっと店にやってきた。
「どうしたの?」
「用事があって、ついでに寄ったの。仕事中の雪音さんも素敵だよ」
「やめてよ」
化粧も剥げているだろうし、疲れてくたびれている。この姿をほめるのは閃理くらいだ。