私と彼の溺愛練習帳
 ある人はそれを見て、無関心に次の情報を見た。
 ある人は、見つかりますようにと祈り、次の瞬間には想い人とのデートに心をはせた。
 ある人は、見つかるわけない、どうせ死んでるよ、と笑った。
 さまざまな反応を呼び、情報は広がっていく。

***

 彼女は看護師をしていたが、辞めた。転勤する夫とともに沖縄に引っ越した。
 付き合わせて悪い、と夫は謝った。
 大丈夫、と笑って答えた。
 そうして、個人病院に再就職した。
 休憩時間にはネットでいろいろな人のつぶやきを眺めた。

 タイムラインに、気になるものを見つけた。
 合成したような女性の画像だった。
「どこかで見たような……」
 休憩時間が終わり、ネットを閉じた。
 だけど仕事中も気になって、首をひねり続けた。

***

 人探しか。
 東北に住む彼は、それを面白そうだと思った。
 八王子ね。
 当時の事故や事件の情報を漁る。
 年齢や性別でわけ、詳細を推定しながら情報を確定させていく。
 あやふやなものを特定するのはいつもわくわくした。

***

 閃理は仕事に集中し、ネットもSNSも見ていなかった。
 雪音をネットで探そうかと思ったときもあったが、やっていない。
 彼女はSNSをやっていない。検索しても手掛かりは得られないだろう。
 前に脅したように、写真を公開して探す気にはなれなかった。彼女はデジタルタトゥーを気にしていた。ネットで公開捜索されたと知れば、傷付くどころではないだろう。

 そもそも彼女を傷付けたのは自分だ。自分で探し、見つけたかった。
 仕事の合間に雪音の部屋を確認した。
 彼女は閃理が買ったものを置いて、自分が買ったものだけを持ち去っていた。
 置いて行かれた。なにもかも。
 全身の力が抜け、崩れ落ちた。
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