私と彼の溺愛練習帳
 白いベッドが目についた。
 雪音が来たときの簡易ベッドは処分して、かわいい白いベッドを買ってあげた。少女趣味すぎる、とぼやいた雪音だが、あとでこっそり、子供の頃に憧れてたお姫様みたいなデザインでうれしい、と恥ずかしそうに告白してくれた。

 だから、お揃いの白いチェストを買ってあげた。また少女趣味、と笑いながら雪音は使ってくれた。
 閃理はチェストをぼんやりと見る。
 その上には、なにも乗っていない。

 なにも?
 がばっと起き上がり、確認する。
 チェストの上に、前はアクセサリーケースが置いてあった。雪の結晶のピアスが入ったケースだ。

 それが、ない。
 持って行ってくれたのか。
 閃理の胸が熱くなった。
 彼の心の小さな結晶を、彼女は持っていった。

 ならば、きっと。
 閃理は気力を振り絞り、仕事を片付けた。
 ネットでなにがバズっているかなど、知る由もなかった。

***

 バズった!
 孫娘は自分の投稿が注目されたことに喜んだ。
 が、次にはうんざりした。
 通知が鳴りやまないし、寄せられるコメントは大半が励ましだ。探し人に繋がらないどころか、必要な情報が埋もれてしまう。

 祖父に愚痴ると、画像を勝手にネットに上げたことを怒られた。
「最初にみんなに聞いてあげるって言ったし、協力したのよ。いいことしたんだから」

 ふてくされた孫娘に、祖父はあきれた。
 若者とはこういうところで感覚が合わない。ネットが身近すぎて危険がわかっていないのだ。

 孫娘に代わり、彼が情報を確認した。老眼鏡をかけて細かい字を見続けるのは大変だった。
 気になるものを見つけた。
 それを書き写すと、彼は知らされていたメアドにメールを送った。
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