私と彼の溺愛練習帳
バシーン!
なにかを叩きつけるような音が響く。
「ひっ!」
久美子は悲鳴を上げた。
今夜、愛鈴咲は友達の家に泊まりに行っている。夫は夜勤だ。
「くみこちゃん……返して……私に返して……」
どこからともなく声がする。ぶーん、と耳障りな音もした。
久美子はその晩も眠れなかった。
帰って来た紀之に久美子は言った。
「お祓いするからお金をちょうだい」
顔をみるなり言われて、紀之はげんなりした。
「おかえりの一言すらくれないのか」
「妻が苦しんでるのに、そんな些細なこと気にしてる場合!?」
「俺は疲れてるんだよ」
紀之はため息をついた。
久美子は苛立った。紀之はいつも疲れたと言い、自分の話を聞いてくれない。
インターホンが鳴った。
モニターを見ると、知らない老人が映っていた。豪華な僧服を身に着け、大きな珠の数珠を手に持っていた。
「なんの用よ!」
「今、大変なことになっていませんか?」
老僧はそう言った。
「ちょっと待って」
久美子は慌てて玄関に出た。
「突然失礼します。どうしても気になってしまって」
老僧は手を合わせて久美子を拝む。
それからまた久美子を見た。
「よくないものが棲みついています」
久美子は息を呑んだ。
「この家のもとの持ち主が怒っています。不当な手段で手に入れたのでしょう」
「不当な手段とは」
久美子の隣に来た紀之が顔を険しくして聞いた。
「それは拙僧にはわかりかねます」
紀之は久美子を見た。
「遺言で相続したと言っていたが、本当か?」
「本当よ! それにあの娘は家なんかいらないって言ったのよ!」
「だけど、よく「私の家だ」ってあの子は言ってたよな。おかしいと思ってたんだ」
「私のこと信じないの!?」
「このままでは、よくないことが起こりますよ」
老僧が割って入った。
なにかを叩きつけるような音が響く。
「ひっ!」
久美子は悲鳴を上げた。
今夜、愛鈴咲は友達の家に泊まりに行っている。夫は夜勤だ。
「くみこちゃん……返して……私に返して……」
どこからともなく声がする。ぶーん、と耳障りな音もした。
久美子はその晩も眠れなかった。
帰って来た紀之に久美子は言った。
「お祓いするからお金をちょうだい」
顔をみるなり言われて、紀之はげんなりした。
「おかえりの一言すらくれないのか」
「妻が苦しんでるのに、そんな些細なこと気にしてる場合!?」
「俺は疲れてるんだよ」
紀之はため息をついた。
久美子は苛立った。紀之はいつも疲れたと言い、自分の話を聞いてくれない。
インターホンが鳴った。
モニターを見ると、知らない老人が映っていた。豪華な僧服を身に着け、大きな珠の数珠を手に持っていた。
「なんの用よ!」
「今、大変なことになっていませんか?」
老僧はそう言った。
「ちょっと待って」
久美子は慌てて玄関に出た。
「突然失礼します。どうしても気になってしまって」
老僧は手を合わせて久美子を拝む。
それからまた久美子を見た。
「よくないものが棲みついています」
久美子は息を呑んだ。
「この家のもとの持ち主が怒っています。不当な手段で手に入れたのでしょう」
「不当な手段とは」
久美子の隣に来た紀之が顔を険しくして聞いた。
「それは拙僧にはわかりかねます」
紀之は久美子を見た。
「遺言で相続したと言っていたが、本当か?」
「本当よ! それにあの娘は家なんかいらないって言ったのよ!」
「だけど、よく「私の家だ」ってあの子は言ってたよな。おかしいと思ってたんだ」
「私のこと信じないの!?」
「このままでは、よくないことが起こりますよ」
老僧が割って入った。