私と彼の溺愛練習帳
「通報されたら一発アウトだけどな」
「貸し切りにしたんだから大丈夫。それに彼女はプライドが高い。通報なんてしないよ」
閃理がにやりと笑って答える。
「征武に会ったことがあるのに気づかないなんてあきれたよ」
「そういう人だとわかってて俺を呼んだんだろ」
「そうだけどさ」
閃理は首をすくめて見せた。
「お姉さんも、ありがとう。おかげでいいシーンが撮れましたよ」
閃理がにこやかに言うと、店員の女性は顔を赤くした。
撮影のためと称してファミレスを貸し切りにしていた。
だから彼女は閃理とジュスティンヌのやりとりを演技だと思っている。
事前にドローンを隠して待機させていた。稼働は征武に頼んであった。
悪鬼になってでも、というセリフが合図だった。
征武はノートパソコンを使い、閃理が組んだプログラムを走らせた。
ドローンのほとんどはプログラム通りに浮かんでダンスを踊るだけだった。
そのうちの二機だけ、征武が操縦した。一機はトイドローン。その脅しで屈しなかったので、トイドローンを下げて中型ドローンをけしかけた。
「ゲートと違って人は動くから、いつぶつかるかひやひやしたよ」
「レースが近いのに、悪かった」
「今度おごれよ」
にかっと笑う彼に、閃理は苦笑した。
雪音は工場での仕事を続けていた。
閃理は戻ってきてほしがったが、入社してすぐに退社するのも迷惑がかかるから、と断った。
雪音が週末に母のお見舞いに行くと、閃理も一緒に来てくれた。
病院からの帰り道、彼がぼそっと言う。
「僕、あなたのところに引っ越そうかな」
「仕事があるでしょ?」
「どこでもできるから。ダメ?」
潤んだ瞳で聞かれて、雪音は言葉に詰まった。
「……ダメ。寮なんだから」
なんとか必死にそう答えた。いいよ、とうっかり言いそうだった。
「貸し切りにしたんだから大丈夫。それに彼女はプライドが高い。通報なんてしないよ」
閃理がにやりと笑って答える。
「征武に会ったことがあるのに気づかないなんてあきれたよ」
「そういう人だとわかってて俺を呼んだんだろ」
「そうだけどさ」
閃理は首をすくめて見せた。
「お姉さんも、ありがとう。おかげでいいシーンが撮れましたよ」
閃理がにこやかに言うと、店員の女性は顔を赤くした。
撮影のためと称してファミレスを貸し切りにしていた。
だから彼女は閃理とジュスティンヌのやりとりを演技だと思っている。
事前にドローンを隠して待機させていた。稼働は征武に頼んであった。
悪鬼になってでも、というセリフが合図だった。
征武はノートパソコンを使い、閃理が組んだプログラムを走らせた。
ドローンのほとんどはプログラム通りに浮かんでダンスを踊るだけだった。
そのうちの二機だけ、征武が操縦した。一機はトイドローン。その脅しで屈しなかったので、トイドローンを下げて中型ドローンをけしかけた。
「ゲートと違って人は動くから、いつぶつかるかひやひやしたよ」
「レースが近いのに、悪かった」
「今度おごれよ」
にかっと笑う彼に、閃理は苦笑した。
雪音は工場での仕事を続けていた。
閃理は戻ってきてほしがったが、入社してすぐに退社するのも迷惑がかかるから、と断った。
雪音が週末に母のお見舞いに行くと、閃理も一緒に来てくれた。
病院からの帰り道、彼がぼそっと言う。
「僕、あなたのところに引っ越そうかな」
「仕事があるでしょ?」
「どこでもできるから。ダメ?」
潤んだ瞳で聞かれて、雪音は言葉に詰まった。
「……ダメ。寮なんだから」
なんとか必死にそう答えた。いいよ、とうっかり言いそうだった。