私と彼の溺愛練習帳
閃理は近郊のテーマパークに車を止めた。イルミネーションが有名なテーマパークだ。
「こんなところでドローンのイベントがあるのね」
「イルミネーションの閉会式だよ」
「開会式は聞いたことあるけど、閉会式もあるのね」
「今年、初めてやるんだって」
またドローンのダンスだろうか。テーマパークでライブをやるミュージシャンもいるから、そんな感じだろうか。
一緒に機材を持って園内を歩いていると、聞きなれた声に呼びかけられた。
「せんぱーい!」
振り返ると、声の主は手を振りながら小走りに寄って来る。美和だった。
「先輩、急に仕事辞めちゃってびっくりしました!」
「ごめん、わけがあって」
「そりゃそうでしょうけど。デート、じゃなさそうですね」
「仕事兼デートかな」
閃理が苦笑して答えた。
「閉会式を見に来たんですか?」
「それをやりに来たんだよ」
「やる側なんてすごい! 私は見に来たんです。すごいって聞いたから」
「プレッシャーかかるなあ」
閃理はまた苦笑した。
「がんばってくださいね。あ、先輩、連絡先、教えてください」
「え、あ、うん」
雪音はスマホを取り出す。
連絡先を交換すると、えへへ、と美和は笑った。
「これで私たち友達ですね!」
雪音は驚いて美和を見た。
「私、大人になってから初めて友達が出来たかも」
「やっだあ、初めてだなんて! あ、友達が待ってるんで、また!」
美和は笑いながら女友達のところへ戻って行った。
「良かったね、雪音さん」
閃理が微笑む。
「機材を持ってなかったら、すぐにでも抱きしめたのに」
「早く行くわよ」
雪音は顔をうつむけて歩き出した。その耳が赤い。
閃理はふんわりと笑って、彼女に続いた。