私と彼の溺愛練習帳
「本当よ」
 閃理の疑う視線を感じた。目を合わせたら嘘がバレる気がして顔を上げられなかった。

「ちょっとこっちに来て」
 閃理は席を立った。
 よくわからないままついて行くと、彼の部屋に導かれた。

「そこに座って」
 ベッドを指定され、雪音は疑問に思いながらも座った。
 直後、彼に押し倒された。

「なにするの!」
「こんな簡単に騙される人、外に出せないよ」
 閃理は雪音の頬に口づける。

「やめて!」
「出て行かないならやめる」
 彼は唇を雪音の首に押してる。
 雪音の背がぞくっとした。

「それでも出ていくっていうなら、続きは合意だよ?」
「横暴だわ!」
「出て行かないならやめる」
 そう言って、彼は雪音の耳たぶを口に含んだ。耳が熱くなる。

「わかった、わかったからやめて!」
 雪音が叫ぶと、彼はようやく離れた。
「わかったって言ったの、ちゃんと聞いたからね」
 閃理はふんわりと笑った。その目には勝ち誇った色があった。

「あなたが出て言ったら、すぐに写真をネットにばらまいて、この人を探していますってやるから」
 雪音は唖然として彼を見た。それはもはや脅迫だ。

「写真なんていつ」
「ドローンで街を撮影したから、あなたも映ってる」
 そういえば、最初に出会ったのはドローンがぶつかったからだった。

「ここにいて。いてくれるだけでいいから」
 雪音は呆然と彼を見つめた。
 彼は優しく澄んだ笑顔を見せた。
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