私と彼の溺愛練習帳



 薄暗い部屋で、雪音は声を上げた。
 彼の手が、指が、動くたびに声を上げる。
「そんな声出して僕を煽って」
「煽ってなんか……あっ」
「ほら、その声」
 くすくすと閃理は笑う。

「だって、気持ちいい……」
 うっとりと雪音は答える。
「そんなかわいいこと言われると我慢できなくなるよ」
 彼はうつぶせになった雪音の上にまたがって、背中をマッサージしていた。

「仕事、大変みたいだね。だいぶ凝ってるよ」
 肩から背中へ、腰へ、閃理はもみほぐしていく。凝った場所に指が圧をかけるたび、雪音は声を上げた。

「そろそろいいかな。終わり」
 閃理は雪音の上からどいた。
 ふう、と息をついて彼女は起き上がる。
「ありがとう。すごく体が楽になった」
「本当は一緒に気持ちよくなりたかったけど」
 狙うように光る彼の目に、雪音はどきっとした。

「あなたが本気でそうしたいって思ったときのお楽しみにしておく。そのときは容赦しないよ?」
 雪音は頬を染めてうつむいた。
 じゃあなんでベッドに連れて来たんだろう。
 雪音が疑問に思っていると、彼はふんわりと笑った。

「こっちにつれてきたのは、あなたがあんまり言い張るから、脅かしただけ。びっくりした?」
 こくん、とうなずいた。

「キスは、いいよね?」
 また、うなずいた。
「よかった」
 彼はそう言って、深いキスを雪音と交わした。
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