私と彼の溺愛練習帳
「シャワー浴びて来る!」
「行ってらっしゃい」
 閃理はまた、ふんわりと笑った。



 雪音が浴室に行くと、閃理はスマホを取り出した。
 征武に電話をかける。
「……大丈夫だったか?」
 電話にでるなり、征武が言った。

「ありがとう。偶然近くにいてくれて助かった」
「ラッキーだったな。バッテリーもなんとかもったし」
 笑うように征武は言った。
「映像はパソコンに送ったよ」
「了解」
 閃理は仕事部屋に向かい、パソコンのメールを確認する。

 雪音から連絡があった直後、電池が、という言葉とともに通話が切れた。
 閃理は急いで出る準備をしながら征武に電話した。

 征武は今日、ドローンサーキットに行くと言っていた。ならばドローンを持って近くにいるはずだ。
 予想通り、彼は近くにいた。
 ドローンで先行して公園の雪音を探してほしいと頼むと、征武は快く願いをきいてくれた。

 そのとき征武はカメラ、スピーカーも搭載されているドローンを持っていた。
 以前、雪音にからむ男をスピーカーつきドローンで撃退する閃理を見て、うらやましくなったのだ。

 そして、買ってしまった。25万ほどだった。350万の業務用ドローンを見たあとに見つけ、安いと錯覚したのも一因だった。これがあれば害鳥を追い払う仕事だってできるし、と自分に言い訳していた。

 サーキット付属の練習場ではこれの試験飛行もしたから、操縦のクセは把握していた。
 さっそく役に立つ。彼はうきうきとドローンを飛ばした。
 もめている男女を見つけると、すぐに声をかけた。
 雪音が逃げたあとも征武はドローンを男につきまとわせ、追わせなかった。

「ドローンは無事か?」
 目的のファイルを確認しながら閃理がきく。
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