私と彼の溺愛練習帳
「お金は多めに入れます。でも全部は無理です。もう会社には来ないでください」
言い捨てて、雪音は出て行った。
雪音のくせに!
愛鈴咲は追いかけて職場に乱入した。
子供時代のことを叫んでやった。汚くて嫌われて、あいつはずっと独りぼっちだった。自分はずっと迷惑をかけられてきた。物を壊されていじめられた。雪音に金も盗まれた。なにもかもを盗もうとしている。そんなことを叫んだ。
しばらくして、雪音は退職した。
それからは派遣で、ときどき職場を変えながら働いている。
金が足りないわよ。体を売ってでも作りなさいよ。
久美子がそう言うと、雪音はにらんで言い返した。
「体を売るのは売春防止法違反で、他人に勧めるのも違法です。次に言ったら警察に行きます」
たとえ話じゃないの。警察ってなによ。
久美子はぶつぶつと文句を言った。
派遣で収入が減った、と雪音はさらに家に入れるお金を減らした。
久美子から渡される愛鈴咲の遊ぶ金が減った。
雪音の部屋に通帳を探しに行ったが見当たらなかった。雪音が風呂に入っている間に財布を見たがカードもなかった。怒って有り金を小銭まで全部抜いた。千円ちょっとしかなかった。社会人のくせに。
いらいらして漁って、いいことノートをみつけた。いつかこれを使ってバカにしてやろう思ってときどき覗いた。ノートはなぜか常に一冊だった。
通りすがりの猫がかわいかった。散歩中の犬を撫でさせてもらった。
そんなことが書かれていて、バカみたいで面白かった。
半年ちょっと前から遠野惣太の名前を見るようになった。
いい男なら私のほうがふさわしいじゃん。
言い捨てて、雪音は出て行った。
雪音のくせに!
愛鈴咲は追いかけて職場に乱入した。
子供時代のことを叫んでやった。汚くて嫌われて、あいつはずっと独りぼっちだった。自分はずっと迷惑をかけられてきた。物を壊されていじめられた。雪音に金も盗まれた。なにもかもを盗もうとしている。そんなことを叫んだ。
しばらくして、雪音は退職した。
それからは派遣で、ときどき職場を変えながら働いている。
金が足りないわよ。体を売ってでも作りなさいよ。
久美子がそう言うと、雪音はにらんで言い返した。
「体を売るのは売春防止法違反で、他人に勧めるのも違法です。次に言ったら警察に行きます」
たとえ話じゃないの。警察ってなによ。
久美子はぶつぶつと文句を言った。
派遣で収入が減った、と雪音はさらに家に入れるお金を減らした。
久美子から渡される愛鈴咲の遊ぶ金が減った。
雪音の部屋に通帳を探しに行ったが見当たらなかった。雪音が風呂に入っている間に財布を見たがカードもなかった。怒って有り金を小銭まで全部抜いた。千円ちょっとしかなかった。社会人のくせに。
いらいらして漁って、いいことノートをみつけた。いつかこれを使ってバカにしてやろう思ってときどき覗いた。ノートはなぜか常に一冊だった。
通りすがりの猫がかわいかった。散歩中の犬を撫でさせてもらった。
そんなことが書かれていて、バカみたいで面白かった。
半年ちょっと前から遠野惣太の名前を見るようになった。
いい男なら私のほうがふさわしいじゃん。