初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
目覚めはふんわりとやってきた。
温かくやわらかい感触が隣にあった。
気持ちいい、と頬をつけた。すべすべとなめらかで、やわらかいのに堅く、不思議な弾力があった。
こんなお布団、持ってたっけ。
そうして初美は思い出す。
自分は旅行に来ていた。
なら、これは旅館の布団だ。
でもこんな感触は初めて。
そう思って目を開けて、驚いた。
なめらかなのは、男性の素肌だった。
悲鳴を上げかけ、ぐっとこらえた。
記憶がいっきに戻ってきた。
酔っ払って、彼と肌を重ねてしまった。
どうしよう。
ぐるぐると思考が回る。
自分も彼も裸だった。
とにかく、服を着なくちゃ。
どきどきしながら、彼を起こさないようにそっと布団を出る。
服を着て外を見ると、すっかり日は昇っていた。
もう除雪も終わっているだろう。
素早く荷物をキャリーにつめて、静かに部屋を出た。
一人暮らしの部屋に戻った初美は、大きく息をついた。
スノーモービル体験はドタキャンして帰ってきた。当日のキャンセルだから、代金は返って来なかった。
やっちゃった。
玄関で座り込む。
旅は何度もしていた。が、名も知らない見知らぬ男性と一晩を過ごすのは初めてのことだった。
旅だけではなく、そのほかでもそんな失態をしたことはない。
しかも、と思い出して赤面する。
彼は優しくて、ぜんぜん痛くなかった。
それどころか。
初美の顔はさらに赤くなった。