初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
まさか、本当に、そう思っていたの?
心に迷いが生じる。
だが、仮にそれが本当だったとしても彼を許す気にはなれないし、ましてやよりを戻すことなんてありえない。
騙されるな、と自分に言い聞かせる。
あのとき、彼は女と一緒に嘲るように笑っていた。
「これからも俺は間違うだろうし、お前には厳しくしてしまうだろう。だが、これだけは信じてほしい。俺はお前を愛してる」
初美はうつむいた。目の前で真摯にそう語られると、どうしても心が揺らいでしまう。
彼をまた好きになることはない。そういう意味では揺らがない。
が、あれは悪意からではなかったのだと、どうしても思いたくなってしまう。人はそこまで悪くはなれないのだと、思いたい。
「俺はお前をあきらめきれない。挑戦することは許してくれ」
「……ごめんなさい。私は蓬星さんが好きなんです」
「それでもあきらめられないんだ。未練がましい男だと、笑ってくれ」
初美は黙って首をふった。気持ちを笑うなんて、絶対にしたくなかった。
「ありがとう。お前のそういうところが好きなんだ」
なんのてらいもなく彼は言う。うつむいている初美には彼の表情は見えなかった。にやりと笑っているその顔が。
翌日からも貴斗はパワハラとしか思えない仕事のふり方をしてきた。
だが、彼も彼なりに一生懸命なのかもしれない。
そう思うと、ただ嫌うことはできなかった。
いい方に捉えすぎだ。自分でもそう思う。だが、蓬星のことも気になって、辞めるとは言い出せずに必死に食らいついて仕事をした。
わからないところは貴斗以外にもきいた。嫌な顔をされながら、教えてもらう。
営業の人が出払ってしまうと、営業事務の女性にも聞いた。
営業事務の女性には特にきつく当たられた。
彼女もまた貴斗のファンなのだ、と思った。あとから来て貴斗の近くで働くなど許せないのだろう。
外回りにも連れて行かれた。彼は歩調を合わせることなく歩くので、物理的にもついていくのが大変だった。
そうしておいて、ご褒美のように、素敵なティールームでお茶とケーキをごちそうしてくれた。優しく微笑し、仕事には慣れたか、周囲とはうまくやっているか、とたずねてくる。
大丈夫です、と答えるのだが、貴斗はそれでも心配そうにしていた。
心に迷いが生じる。
だが、仮にそれが本当だったとしても彼を許す気にはなれないし、ましてやよりを戻すことなんてありえない。
騙されるな、と自分に言い聞かせる。
あのとき、彼は女と一緒に嘲るように笑っていた。
「これからも俺は間違うだろうし、お前には厳しくしてしまうだろう。だが、これだけは信じてほしい。俺はお前を愛してる」
初美はうつむいた。目の前で真摯にそう語られると、どうしても心が揺らいでしまう。
彼をまた好きになることはない。そういう意味では揺らがない。
が、あれは悪意からではなかったのだと、どうしても思いたくなってしまう。人はそこまで悪くはなれないのだと、思いたい。
「俺はお前をあきらめきれない。挑戦することは許してくれ」
「……ごめんなさい。私は蓬星さんが好きなんです」
「それでもあきらめられないんだ。未練がましい男だと、笑ってくれ」
初美は黙って首をふった。気持ちを笑うなんて、絶対にしたくなかった。
「ありがとう。お前のそういうところが好きなんだ」
なんのてらいもなく彼は言う。うつむいている初美には彼の表情は見えなかった。にやりと笑っているその顔が。
翌日からも貴斗はパワハラとしか思えない仕事のふり方をしてきた。
だが、彼も彼なりに一生懸命なのかもしれない。
そう思うと、ただ嫌うことはできなかった。
いい方に捉えすぎだ。自分でもそう思う。だが、蓬星のことも気になって、辞めるとは言い出せずに必死に食らいついて仕事をした。
わからないところは貴斗以外にもきいた。嫌な顔をされながら、教えてもらう。
営業の人が出払ってしまうと、営業事務の女性にも聞いた。
営業事務の女性には特にきつく当たられた。
彼女もまた貴斗のファンなのだ、と思った。あとから来て貴斗の近くで働くなど許せないのだろう。
外回りにも連れて行かれた。彼は歩調を合わせることなく歩くので、物理的にもついていくのが大変だった。
そうしておいて、ご褒美のように、素敵なティールームでお茶とケーキをごちそうしてくれた。優しく微笑し、仕事には慣れたか、周囲とはうまくやっているか、とたずねてくる。
大丈夫です、と答えるのだが、貴斗はそれでも心配そうにしていた。