初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
 曇りのない優秀で真面目な男。
 つまらない、と貴斗は評したが、未麻はそれを面白そうだと思った。おそらくは女にかなりモテたはずだ。それを言わなかったということは、貴斗よりモテたのだろう。

 そんな品行方正で、どの女も憧れてやまないような男が悔しそうにしながら自分にかしずくのはどれたけ気分がいいだろう。
 貴斗はこんな楽しいことを続けて来たのだ。私もこれからはそれを楽しんでみようか。
 なんだか新しい扉を開けそうな気がする。

 そう思いながら、蓬星にメッセージを送る。連絡先は貴斗から聞いていた。
 あなたが忘れられないの。会いたい。
 ただそれだけを送った。けなげな女のように。
 蓬星からはすぐに返事が来た。

 俺も会いたいと思っていた。
 意外な返事に少し驚いた。前回の態度からして断られると思っていた。それをどう脅して、あるいは懐柔して面会に持ち込むか、考えていたというのに。

 蓬星は性急に今日の夜に会いたいと言い出した。
 いいお店を知ってるんだ。気に入ってくれると思う。
 メッセージを見て、せせら笑う。

 まあいいわ。
 惚れられたなら、それはそれで楽に手に入る。TODOの孫ならお飾りの夫にしたところで、それなりにお金をくれるだろう。惚れた弱みで振り回すのも楽しそうだ。

 遊ぶのは外でもできるのだから。
 夜の仕事はもうしなくても良さそうだ。
 男たちの機嫌をとるのはめんどくさい。お金になるからやっているだけなのに、自分に惚れているのだと勘違いする男のなんと多いことか。

 これからは思い切り遊ぼう。
 未麻はうきうきと身支度を始めた。
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