初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
 彼はもう自分と体の関係があると思っているはずだ。だから手に入ったも同然だと思っているのだろう。そんな簡単にいくわけないじゃない。ここからどう振り回してやろうか。

「私のイメージでお酒をいただけるかしら」
 バーデンに注文する。と、青いカクテルを出された。

 青。
 未麻は少し眉を寄せる。
 自分が彼をはめるのに使ったのもまた青いカクテルだった。

「君との出会いもまた青いカクテルだった。あなたには青が似合うな」
 蓬星はブランデーグラスを掲げた。
 こんな男に睡眠薬を盛るような発想はないか。そもそも、そんなことをしなくても私を手に入れることができると思っているのだから。

 乾杯を交わして、未麻はカクテルを飲む。
 蓬星と雑談を交わして飲み干した頃。
 バーのドアが開かれた。
 がやがやと作業着を着た男たちが入ってくる。服のあちこちが汚れ、髪は乱れている。あきらかに仕事帰りだ。

 未麻は美しく眉をひそめた。
 あんな男たちの入店が許されるなんて。
 だが、一人だけ気になる男がいた。その男は誰より筋肉がついていた。
 今まで未麻が相手にしてきたのは都会的なスマートな体型の男だけだった。太った男は人類ではないと思っていた。

 だが、その男は違う。体は大きいが、脂肪がなさそうで、体のすべてが筋肉のように見えた。
 ああいう男は試したことがないわ。
 未麻は舌なめずりをするかのように男を見た。

 蓬星を落としたら、次はああいうのもいいかもしれない。
 男と目が合うと、男は照れたように目をそらした。
 シャイな筋肉……。いいわ。
 未麻はうっとりとグラスを揺らした。

 また作業着姿の男が入ってきた。店に似合わない男たちが、どうしてこんなに来るのだろう。なぜ店員は入店を許すのだろう。

 未麻は怪訝にバーテンを見るが、彼はなにも言わない。
 男たちだけで店は満杯になった。それだけでも許しがたいというのに。
< 137 / 176 >

この作品をシェア

pagetop