初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
観光を終えると、ようやく移動を開始した。タクシーで目的地へ向かう。
「蔵王へ」
彼の言葉に、初美は驚いた。
「こんな時間から?」
「先方の指定だから。仕事なんだから」
仕事と言われれば否やも言えなかった。
「蔵王の山腹にある宿だ。浴槽のリノベをするそうだ」
なんだかおかしな気がした。その案件に本社から営業部長が行くだろうか。
「どうしても私も行かないといけませんか?」
「先方には二名で行くと伝えてある。一人で行って会社の信用をなくすわけにはいかない」
初美は反論できなかった。こういうときに何が正解なのかわからない。
「わかりました」
仕方なく、貴斗とともに向かう。
「蔵王は樹氷が有名だそうだ。宿の近くにも樹氷が見られるポイントがあるらしい」
蔵王の山腹、しかも樹氷が見られるようなところにある宿とは。往来が不便そうだが、だからこそ秘境の温泉なのだろうか。
「お前は貴斗とグルだよな」
男たちを後ろに控えて、蓬星は未麻に言う。
「正直に話せ。でなければ、わかるよな」
蓬星の暗く光る目を見て、未麻はがくがくとうなずく。
「お前がやったことを話せ」
「私は、あなたのお酒に睡眠薬を入れて飲ませました。まだ動けるうちにホテルの部屋に連れ込んで、服を脱がせて、まるで一緒に寝たかのような写真を撮りました」
「その写真はどうした?」
「貴斗に言われて、あの女に送りました」
「貴斗は来島貴斗だな」
「そうです」
「あの女とは?」
「芦屋初美。貴斗が狙ってるから協力しろって言われて……」
未麻は懇願するように蓬星を見た。
「私は脅されたの、やりたくはなかったの、だけど弱みを握られてて!」
「弱みとは」
「それは……」
なんと言っていいのかわからなかった。実際には弱みを握られたわけではないのだから。
「蔵王へ」
彼の言葉に、初美は驚いた。
「こんな時間から?」
「先方の指定だから。仕事なんだから」
仕事と言われれば否やも言えなかった。
「蔵王の山腹にある宿だ。浴槽のリノベをするそうだ」
なんだかおかしな気がした。その案件に本社から営業部長が行くだろうか。
「どうしても私も行かないといけませんか?」
「先方には二名で行くと伝えてある。一人で行って会社の信用をなくすわけにはいかない」
初美は反論できなかった。こういうときに何が正解なのかわからない。
「わかりました」
仕方なく、貴斗とともに向かう。
「蔵王は樹氷が有名だそうだ。宿の近くにも樹氷が見られるポイントがあるらしい」
蔵王の山腹、しかも樹氷が見られるようなところにある宿とは。往来が不便そうだが、だからこそ秘境の温泉なのだろうか。
「お前は貴斗とグルだよな」
男たちを後ろに控えて、蓬星は未麻に言う。
「正直に話せ。でなければ、わかるよな」
蓬星の暗く光る目を見て、未麻はがくがくとうなずく。
「お前がやったことを話せ」
「私は、あなたのお酒に睡眠薬を入れて飲ませました。まだ動けるうちにホテルの部屋に連れ込んで、服を脱がせて、まるで一緒に寝たかのような写真を撮りました」
「その写真はどうした?」
「貴斗に言われて、あの女に送りました」
「貴斗は来島貴斗だな」
「そうです」
「あの女とは?」
「芦屋初美。貴斗が狙ってるから協力しろって言われて……」
未麻は懇願するように蓬星を見た。
「私は脅されたの、やりたくはなかったの、だけど弱みを握られてて!」
「弱みとは」
「それは……」
なんと言っていいのかわからなかった。実際には弱みを握られたわけではないのだから。