初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
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初美を見つけたとき、蓬星は半ば絶望した。
雪に埋もれるようにして、初美は倒れていた。
すぐに雪を払い、コートをかけて抱き上げ、乗ってきたスノーモービルで山小屋を目指す。そのほうが麓に降りるより近かったからだ。
早く温めなくては。
その一心で初美を運び、部屋に入るなり濡れた服を脱がせた。
2階から毛布を持ってきて初美にかけた。暖炉の火は消えていたから、すぐにまた火を起こした。
自分もまた、凍えている。ブランデーを煽って体を温めた。
初美の手を握る。冷たかった。貴斗にさらわれたときにも雪庇の上にいたときにも握れなかった手を、今はしっかりと握ることができる。
決してこの手を離さない。
麓に連絡したが、吹雪で救助は難しいということだった。
とにかく温めなくては。かといって急激に温めるのもよくはない。
すぐに自分も服を脱ぎ、初美と一つの毛布にくるまった。
まるで氷を抱いているかのようだった。こんな冷たさに耐え、彼女は自分を待っていた。蓬星はぎゅっと彼女を抱きしめた。
どれくらいそうしていただろうか。
彼女のまぶたがピクリと動いた。
蓬星は近くに置いていたブランデーを口に含んだ。それを気付けのために初美に流し込む。
初美はごくりとそれを飲み込んだ。
そうして、ゆっくりと目を開いた。
喜びに、蓬星の目から涙があふれた。
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しばらくして落ち着いた蓬星は、恥ずかしそうにうつむいた。
「ごめん。男のくせに泣くなんてカッコ悪いな」
自嘲するように、蓬星が笑う。
「私が心配かけたせいよね。ごめんなさい」
「あなたのせいじゃない。俺が……」
初美は自分からその唇を塞いだ。
蓬星が驚いていると、初美はいたずらっぽく微笑んだ。
「今は男女平等なのよ。泣くくらい、なんとも思わないわ」
「ありがとう」
蓬星が優しく微笑を返す。