初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
「起きて、初美さん」
蓬星の声に、初美はむにゃむにゃと寝返りを打った。まだ眠い。寝させてほしい。
「起きて、早く。でないと襲っちゃうよ」
初美は驚いてガバっと起きた。
くすりと笑う蓬星と目があって、なんだか恥ずかしくて目をそらした。
「おはよう」
「おはようございます」
答えて、自分がベッドにいることに気がついた。最後の記憶は暖炉の前だった。ということは彼がここまでつれてきてくれたのだろうか。
いろいろと恥ずかしくなり、初美はうつむく。
「悪いけど、着替えて早く起きて。見せたいものがあるんだ」
「わかったわ」
初美はベッドから起きると、蓬星から渡された服を着た。
「母のやつだけど、サイズはどう?」
「大丈夫そうよ。借りてしまって大丈夫?」
「これくらい大丈夫だよ」
蓬星は昨日と同じ服だった。干しておいたのが乾いたのだろう。歓迎会で見たときと同じコートだ、と初美はなぜかどきどきした。
ダウンも借りて、蓬星に連れられて外に出る。
外に出て、スノーモービルで移動する。
すぐに樹氷の森の中にたどり着いた。
が昨日と違い、誰も人はいなかった。足跡のついていない雪はふわふわでさらさらとしていた。
そして、大気が比喩でなくきらきらと輝いていた。
「すごい、なにこれ」
初美は簡単の声を上げ、スノーモービルを降りた。続いて蓬星も降りて、彼女の隣に立つ。
「ダイヤモンドダストだ。マイナス15度以下の湿度の高い日で、なおかつ快晴で無風の日にしか見られない。空気中の水分が凍って光を反射しているんだ。東北で見られるのは稀だ。これを見せたくて起こしたんだ」
「そんなに条件が厳しいのね。見られるなんて運がいいわ」
初美はそっと蓬星に寄りかかる。