初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
「ほら、まずは一杯」
ごまかすように言い、おちょこを持たせ、徳利からお酒を注ぐ。
「あとでお仕置きだからね」
「なにそれ!」
初美が顔を赤くすると、蓬星はくすりと笑ってお酒を飲み干した。
初美にもおちょこを持たせ、蓬星はお酒を注ぐ。
「また一緒に来られて良かった」
「桜が見事ね。星空に映えて素敵」
「星空と言えば、初美さんが出したプラネタリウム風呂、通りそうだよ」
「本当に!?」
初美は声を上げた。
箱根のホテルからお風呂の改装の際、何か新しいことをできないかと相談されていた。全社的に公募され、初美は企画を応募していた。
「でも、通常営業じゃなくてイベントとしてやるみたいだけど」
「それでもうれしい。プラネタリウムにするには暗さも必要だから、安全性の問題もあって通らないかと思った!」
「暗くするんじゃなくて、星空のような装飾をするらしい。作るの楽しそうだな」
蓬星は懐かしそうに言う。
彼はもともとお風呂をつくる人だったのだ、と初美の胸がちくりと痛んだ。
初美のことがなければ現場に戻り、楽しく仕事をしていたかもしれない。
「……ごめんね」
初美が謝ると、蓬星は驚いて彼女を見た。
「どうして?」
「だって、私のせいで、本当はやりたくなかったことをやるはめになったんでしょ? それに、社長になるなら私なんて不釣り合いっていうか……」
言い淀んだ初美を、彼はふいに抱きしめ、キスをした。
湯船に大きな波が起きて、船のお盆が沈みそうになる。
まるで溺れるようだ、と初美は思った。彼の愛に溺れる私みたいに。
そう思いながら目を閉じて、彼の深いキスを受け入れる。
唇を離したとき、蓬星は熱く初美を見つめた。
「今すぐお仕置きしたくなった」
「なに言ってるの!」
蓬星はくすりと笑った。
「嘘だよ。愛する人にそんなことしない。俺はただの男で、ただあなたを愛している」
初美は胸にこみあげるものを抱え、蓬星を見つめた。
「私も、愛してる」
二人の姿が淡い星影に重なる。
風がさらりと吹き、通り過ぎた。
愛を確かめあう二人を、桜吹雪が優しく包みこんでいた。
終
ごまかすように言い、おちょこを持たせ、徳利からお酒を注ぐ。
「あとでお仕置きだからね」
「なにそれ!」
初美が顔を赤くすると、蓬星はくすりと笑ってお酒を飲み干した。
初美にもおちょこを持たせ、蓬星はお酒を注ぐ。
「また一緒に来られて良かった」
「桜が見事ね。星空に映えて素敵」
「星空と言えば、初美さんが出したプラネタリウム風呂、通りそうだよ」
「本当に!?」
初美は声を上げた。
箱根のホテルからお風呂の改装の際、何か新しいことをできないかと相談されていた。全社的に公募され、初美は企画を応募していた。
「でも、通常営業じゃなくてイベントとしてやるみたいだけど」
「それでもうれしい。プラネタリウムにするには暗さも必要だから、安全性の問題もあって通らないかと思った!」
「暗くするんじゃなくて、星空のような装飾をするらしい。作るの楽しそうだな」
蓬星は懐かしそうに言う。
彼はもともとお風呂をつくる人だったのだ、と初美の胸がちくりと痛んだ。
初美のことがなければ現場に戻り、楽しく仕事をしていたかもしれない。
「……ごめんね」
初美が謝ると、蓬星は驚いて彼女を見た。
「どうして?」
「だって、私のせいで、本当はやりたくなかったことをやるはめになったんでしょ? それに、社長になるなら私なんて不釣り合いっていうか……」
言い淀んだ初美を、彼はふいに抱きしめ、キスをした。
湯船に大きな波が起きて、船のお盆が沈みそうになる。
まるで溺れるようだ、と初美は思った。彼の愛に溺れる私みたいに。
そう思いながら目を閉じて、彼の深いキスを受け入れる。
唇を離したとき、蓬星は熱く初美を見つめた。
「今すぐお仕置きしたくなった」
「なに言ってるの!」
蓬星はくすりと笑った。
「嘘だよ。愛する人にそんなことしない。俺はただの男で、ただあなたを愛している」
初美は胸にこみあげるものを抱え、蓬星を見つめた。
「私も、愛してる」
二人の姿が淡い星影に重なる。
風がさらりと吹き、通り過ぎた。
愛を確かめあう二人を、桜吹雪が優しく包みこんでいた。
終