初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
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午後の始業の前に、トイレに行った。
そこでは瑚桃が化粧を直していた。
「せんぱーい。DVDはどうでしたぁ?」
初美は顔をひきつらせる。
「あれは私のじゃないから」
「知ってますよぉ」
瑚桃は笑顔で言う。
知っていてあんな大声で言うのか。初美は彼女の神経がわからない。
「先輩、エッチが好きですよね。だからDVDをプレゼントしたんですよ」
「はあ!?」
なにがどうなってエッチ好きだと思われるのか、わからない。むしろ苦手なのに。というか、プレゼントとは。
「好きなわけじゃないし、あんなものいらないわよ!」
「でも引き出しの紙袋にエロマンガが入ってたし」
「勝手に開けたの?」
「それがなにか」
こういうところ、ほんと無理って思う。
「おすすめを探してあちこち周ったんですよ。男の人にジロジロ見られて大変だったんですから。中古なんですけど、よりすぐりですよぉ」
その情熱を仕事に向けてほしい。
っていうか、あの手のものでさらに中古って、気持ち悪くなかったのか。
「二度とやらないでね。嫌だから」
「はあい」
返事は軽くて、まったく信用できなかった。
事務の時代に初美がいじられているのを見て以来、瑚桃は初美にはなにをしてもいいと勘違いしている。
たいてい、悪ふざけの度合いがひどすぎた。
シュークリームあげます、と言われたから礼を言って受け取った。食べた直後に噴いた。激辛唐辛子がたんまり入っていた。汚い、と初美が周りに怒られた。瑚桃はそれを見てゲラゲラ笑った。
来客のためにお茶を運んでいるときに、同僚が、あぶなーい、とふざけてぶつかるふりをしたあと。
瑚桃はガチでぶつかりにきて、初美は転んでお茶をかぶった。湯呑みも割れた。