初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
「子供の頃に来たことあるけど、だいぶ変わったなあ」
「そうなんですか?」
「こんな水中回廊なんてなかったよ」
水のトンネルを見て、彼は言う。
「ちょっと、いい?」
彼がベンチを指して言う。
うなずいて、一緒に座った。
青い水の中に差し込む光がいくつもの柱になって、幻想的だ。
銀色の大きな魚が眼の前を通り過ぎ、エイがひらひらと壁沿いに泳いでいく。
「エイの顔って、なんかおもしろいよね。正確には顔じゃないけど」
体の裏側に情けない顔をして見える。目に見えるような二つの穴は鼻で、本当の目は表側についている。
「魚たち、ちゃんと透明な壁を避けて泳いでるのが不思議です」
「そうだね。彼らには俺達がどう見えているのかな。空気に囚われたかわいそうな生き物、なのかな」
そうかもしれない、と初美は思う。
空気を読んで、場に合わせて、人に合わせて、流されて。
「実際にはなんにも考えてないですよね。脳みそ小さいし、生きることばっかりで。そのほうがいいような気もします。潔くて」
「だけど、幸せを感じることも少ないかもね」
彼が肩に手を載せてくる。
「!?」
初美は驚く。
こういうとき、どうするべきなのか。スマートに、不快を与えずに彼の手をどけるにはどうしたらいいんだろう。
初美の気を知ってか知らずか、彼は初美を抱き寄せ、魚を見続ける。
どういうつもりでこんなことをするんだろう。
初美はそんなことばかりが気になって、もう水槽どころではない。
魚ならこんなことで悩まないだろうな、と初美はうつむく。
「次、いく?」
ささやきと共に吐息が耳にかかる。初美は顔を赤くしてうなずいた。
立ち上がったときのどさくさで、なんとか彼の手を逃れることができたが、手を繋がれてしまい、結局どきどきさせられた。
「そうなんですか?」
「こんな水中回廊なんてなかったよ」
水のトンネルを見て、彼は言う。
「ちょっと、いい?」
彼がベンチを指して言う。
うなずいて、一緒に座った。
青い水の中に差し込む光がいくつもの柱になって、幻想的だ。
銀色の大きな魚が眼の前を通り過ぎ、エイがひらひらと壁沿いに泳いでいく。
「エイの顔って、なんかおもしろいよね。正確には顔じゃないけど」
体の裏側に情けない顔をして見える。目に見えるような二つの穴は鼻で、本当の目は表側についている。
「魚たち、ちゃんと透明な壁を避けて泳いでるのが不思議です」
「そうだね。彼らには俺達がどう見えているのかな。空気に囚われたかわいそうな生き物、なのかな」
そうかもしれない、と初美は思う。
空気を読んで、場に合わせて、人に合わせて、流されて。
「実際にはなんにも考えてないですよね。脳みそ小さいし、生きることばっかりで。そのほうがいいような気もします。潔くて」
「だけど、幸せを感じることも少ないかもね」
彼が肩に手を載せてくる。
「!?」
初美は驚く。
こういうとき、どうするべきなのか。スマートに、不快を与えずに彼の手をどけるにはどうしたらいいんだろう。
初美の気を知ってか知らずか、彼は初美を抱き寄せ、魚を見続ける。
どういうつもりでこんなことをするんだろう。
初美はそんなことばかりが気になって、もう水槽どころではない。
魚ならこんなことで悩まないだろうな、と初美はうつむく。
「次、いく?」
ささやきと共に吐息が耳にかかる。初美は顔を赤くしてうなずいた。
立ち上がったときのどさくさで、なんとか彼の手を逃れることができたが、手を繋がれてしまい、結局どきどきさせられた。