初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
「大丈夫だった? ごめん、抑えきれなかった」
愛し合ったあと、彼はそう言った。
「大丈夫……」
「言い訳させてもらうとさ。ずっとあなたに煽られて、そのたびにお預けさせられてきたんだから」
「煽ったことなんてないです」
とんでもない言いがかりだ、と初美は思う。
「そう? 大人のマンガを見せられたり、トイレに入ってきたり、DVDを見せられたり」
「事故です! DVDは私じゃないです!」
「知ってる。プレゼントだったのに、って仁木田さんがぶーたれながら言ってきたから」
知ってるのに、自分が煽った扱いするなんて。
恨みがましい目で見ると、彼はくすりと笑った。
「愛してる」
彼に抱きしめられて、初美は彼の胸に顔をうずめた。
こう言ってもらえるのは最初だけかもしれない。すぐに自分に飽きてしまうかもしれない。
彼の一つ一つに、喜び、疑い、困惑する。こんなのがずっと続くのだろうか。
「お願いがあります」
「なに?」
初美は彼を見た。彼は微笑して自分を見つめ返す。優しいまなざしが、切なかった。
「別れるときは早く言ってください。浮気してからふるなんて、やめてください」
蓬星は目を丸くした。
「浮気なんてしない」
「それでも約束してください」
初美が真剣に言うと、彼は困ったようにまた微笑した。
「わかった、約束する」
彼が言うと、初美はホッと息をついた。
***
車の中で、初美は眠ってしまった。
無防備な寝顔を見た蓬星は、自分の中に新たな愛しさが湧いてくるのを感じた。
明日は仕事だ。早く帰らなくてはならない。
なのに、彼女を誘ってしまった。
彼女が隣にいると思うと、我慢できなかった。