初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~

***

「ねえ」
 初美が呼びかけるが、男は返事もなく自分を見つめるばかりだ。
「やっぱり魅力ないんだ」
 初美はしょんぼりと目を落とし、畳を見つめた。
「そんなことはない」
 男が言い、初美は再び彼を見た。お酒を飲んでいないのに、頬がほんのり赤みを帯びていた。

「本当に?」
 初美は聞き返した。
「確かめてみる?」
「どうやって?」
「こうやって」
 男は初美の唇を奪った。
 驚く彼女に構わず、舌を入れてくる。
 男は飢えを満たすかのように唇を貪った。
 激しくかき回され、初美の芯が熱くなる。
 唇が離れると、彼女は陶然と彼を見た。

「わかったら、もう離れ……」
 男が言い切る前に、初美から口をつけた。
 それ以上はなにもできずにいると、男がまた舌を絡めてくる。ねちっこく、初美をじっくり味わうかのように。
 最後に彼は初美の唇をペロリと舐めてから離れた。

「誘ってるのか」
 挑戦的な目で見られ、背筋がぞくぞくした。今までにない感覚だった。
 初美はなにも答えなかった。――答えられなかった。

 それを肯定とったのか、男はそっと彼女を抱き上げた。
 間近に迫った彼から、シャンプーのさわやかな香りがした。元カレと違う香りに、胸がチクッと痛んだ。

 見えないなにかを恐れるように、初美は彼にしがみついた。浴衣越しの筋肉がたくましかった。
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