初めての溺愛は雪の色 ~凍えるため息は湯けむりにほどけて~
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「ねえ」
初美が呼びかけるが、男は返事もなく自分を見つめるばかりだ。
「やっぱり魅力ないんだ」
初美はしょんぼりと目を落とし、畳を見つめた。
「そんなことはない」
男が言い、初美は再び彼を見た。お酒を飲んでいないのに、頬がほんのり赤みを帯びていた。
「本当に?」
初美は聞き返した。
「確かめてみる?」
「どうやって?」
「こうやって」
男は初美の唇を奪った。
驚く彼女に構わず、舌を入れてくる。
男は飢えを満たすかのように唇を貪った。
激しくかき回され、初美の芯が熱くなる。
唇が離れると、彼女は陶然と彼を見た。
「わかったら、もう離れ……」
男が言い切る前に、初美から口をつけた。
それ以上はなにもできずにいると、男がまた舌を絡めてくる。ねちっこく、初美をじっくり味わうかのように。
最後に彼は初美の唇をペロリと舐めてから離れた。
「誘ってるのか」
挑戦的な目で見られ、背筋がぞくぞくした。今までにない感覚だった。
初美はなにも答えなかった。――答えられなかった。
それを肯定とったのか、男はそっと彼女を抱き上げた。
間近に迫った彼から、シャンプーのさわやかな香りがした。元カレと違う香りに、胸がチクッと痛んだ。
見えないなにかを恐れるように、初美は彼にしがみついた。浴衣越しの筋肉がたくましかった。