この愛が、いつか咲きますように
その様子に少し愛華は安心し、「こら。そんなこと言ってないで、大人しく寝てなさい」と言ったのだった。



それからも、いつも通りの日々が続いた。怪我をしたり体調を崩した生徒たちに寄り添い、生徒たちのお喋りに付き合い、そして悠二からのプロポーズを流す。

「結婚しよ?」

「お断りします」

このやり取りをするのは何度目だろうか。悠二が保健室を出て行った後、愛華は息を吐きながらデスクの引き出しを開け、悠二がくれたキーホルダーを取り出し、眺めていた。その時である。

「すみません……。頭ちょっと痛くて……」

そう言い保健室に入って来たのは、三年生の女子生徒である。愛華はすぐに彼女に「大丈夫?」と言いながら駆け寄った。ここ最近、急激に寒くなり体調を崩しやすい時期だ。念の為、体温計を愛華は取り出す。

「はい。熱測って」

「わかりました」

女子生徒は体温計を脇に挟んだ後、愛華のデスクに置かれたうさぎのキーホルダーを見つけた。それを見て「先生、これ誰から貰ったんですか?」と訊ねる。
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