この愛が、いつか咲きますように
『文豪の作品って堅苦しそうなイメージあったけど、読みやすいやつたくさんあってよかった〜。先生、俺結構本読むようになったよ。そろそろ応えてくれていいんじゃない?』

修学旅行に行く前、そう悠二が言って愛華がいつものように流したのだ。あの笑顔を思い出し、愛華の胸が締め付けられるような感覚を覚えていく。

(いやいや、何で歳下のしかも学校の生徒のことこんなに考えるわけ?)

自分はどこかおかしいのだろうかと愛華は熱を測るものの、平熱だった。倦怠感や頭痛などもなく健康体である。

気を紛らわそうと「山月記」のページを捲るものの、この本の感想を楽しそうに話していた悠二の顔をさらに鮮明に思い出させるだけだった。

『先生、好き。結婚しよ?』

本気なのか冗談なのかわからない告白は、もう何度聞かされたかわからない。だが、その告白を思い出すことが最近増えた気がする。

「私、やっぱり変だわ……」

いつもは集中できる読書が、悠二がいない今日は集中できない。愛華がそんな自身に戸惑っていると、保健室のドアがゆっくりと開く。
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