千年愛


真行司家にはこんな食卓はなかった。俺が欲しかったものが、ここにはあると思った。本当に素敵なものは、お金で買うようなものじゃなく、春の花びらや、夏の風や、冬の雪…のようなタダで手に入るものなのかもしれないと…。


食事を済ますと俺は風呂に入った。風呂は少し大きめの檜の香り豊かなお風呂…。


そのお湯に浸かりながら今日のことを一つ一つ思い出していた。どれをとっても、舞ちゃんはアーサだとしか考えられない。


しかし僕の顔や声や仕草…どれ一つ…彼女は反応を示すことはなかった。


とすれば…舞ちゃんはやはりアーサではないのか?



どれだけ考えても分からない。俺はお湯で顔をざぶっと洗い、風呂を上がった。




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