千年愛
俺の絵が完成に近付いた時、俺の左手の『あの指輪』を見て、彼女は急に表情を変えた。
指輪を凝視する目は、見開いたまま…彼女は俺の指輪に手を伸ばしながら、突然気を失い倒れ込んだ。
「舞ちゃん!舞ちゃん!どうした!」
「ね!舞ちゃん!」
倒れ込んだ彼女を抱き起こそうと手を伸ばした時、シルバーのネックレスが彼女の襟からこぼれた。
そのネックレスには、プロポーズしたあの日に俺がアーサにプレゼントした…俺が今もしている指輪と同じ指輪がぶらさがっていた。
俺はそれを見て思わず「アーサ〜っ!」と大声で叫んでいた。
俺の声に驚いた蓉子さんが慌てて飛んで来た。
「舞ちゃん!舞ちゃん!大丈夫?」
「すみません。真行司さん、舞ちゃんを部屋まで運んでもらえませんか?」
と蓉子さんに言われ、俺は言われるまま彼女を抱きかかえて、彼女の部屋まで運んだ。
彼女を運ぶと俺は部屋を出て、廊下で成り行きを見ていた。
アーサ…
やっぱり…アーサは生きていた。
良かった…
舞ちゃんがアーサであることは間違いないと思った。
アーサが生きていたことだけで嬉しかった。
アーサであるはずなのに、なぜアーサは俺が分からないのか…それが不思議でならなかった。
もう二度とアーサを放さない…。
廊下で待ちながら…そう誓っていた。