千年愛


「分からないわよね。ごめんね。

最初から話すわね。じゃないと無理よね。




アタシが舞ちゃんと初めて会ったのは、

今から三か月少し前…そう、

たしか去年の11月10日だったわね。

初雪が降った日だったから。



あの日…

父がその日のお客さんを迎えに駅まで

行った時…駅のベンチに一人の女の子が

気を失って倒れてたの。




それで父は彼女をここまでおぶって来た。

そして、部屋で休ませてお医者さんに

みてもらったの。




お医者さんは、特に異常はないから、

とにかくゆっくり休ませなさいとの

ことだった。




でも結局は三日三晩…目を覚ますことは

なかったわ。そして四日目の朝…

ようやく舞ちゃんは目を覚ました。




それで彼女に「どこから来たの?名前は?

どうして来たの?」と尋ねると…

彼女は怯えるように…いきなり

起き上がって出て行こうとしたから、

アタシも慌てちゃって…

走って抱き留めたの。




アタシが懸命に彼女を抱き締めて、

「いいのよ。無理して話さなくても。」

と言うと、彼女はただ「ごめんなさい!

ごめんなさい!」と繰り返すばかり。




それからしばらく抱き締めてあげてたら、

少し落ち着いたみたいで、少しずつ

話し始めたの。」






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