千年愛
蓉子さんは、「本当に舞ちゃんなのね…
じゃなくて…アーサ?だったわね。」
「アーサは呼び名で、名前は立花亜里沙です。」
「あ…
このメールの白い兎ってのがあったから、
白兎の郷に行きたがってたのね。
このメールに舞ちゃんは全てを
託してたのかもね。」
そういう蓉子さんの目にも
涙が溢れていた。
携帯を受けとり俺が部屋を
出ようとすると、蓉子さんは
俺の逸る気持ちを鎮めるように
「でもね…レオさん…舞ちゃんが
自分で思い出せるまで、
無理して思い出させない方がいいわ。
…ね…君も辛いだろうけど。」と言った。
「そうですね。俺ももう別に彼女が
アーサだろうが、舞ちゃんだろうが…
どっちでもいいです。
こうやって…
彼女にまた出会えただけで…。
一週間後、獅子座流星群を二人で
見に行って、また…今度は舞ちゃんに
プロポーズします。
これからは俺が彼女を守ります。
…彼女と生きていきます。
そう決めたんです。
立花亜里沙であっても、
一ノ瀬舞であっても…
彼女であることに変わりはありませんから。
例え彼女が昔の二人のことを忘れていても
夜空のムコウに…
明日は続いてるんですよね。
だから何度でも…プロポーズします。
死ぬまで…。」
「良かった…。これで二人にも、
やっと春が来るのね。
高山の雪も溶け出すわね。
…もうすぐ。」
蓉子さんの言葉が嬉しくて、
返事もできずに俺はまだ目を腫らしたまま
雪がちらつく外へ出て行った。