婚約破棄されたので悪女を演じることにしました~濡れ衣を着せられた聖女ですが、すべて捨てて自由になるのでお構いなく~
「エマリネ、本日をもって貴様との婚約を破棄する!」
壇上で高々と婚約破棄を宣誓するのは、婚約者であるライアン王太子その人だ。艶やかな金髪をかき上げ、傲慢な笑みを浮かべたまま見下ろす先にいるのは、私――エマリネ・コールマンである。
王城の広間で行われているパーティーは、本来ウィルメント王国の王太子と聖女の婚約を発表する場だった。国内の上流階級の貴族が集まる中、身内の人間だけが満面の笑みを浮かべていることから察するに、最初から仕組まれていたらしい。
結い上げた亜麻色の髪に合わせた赤のドレスは新調したばかりだというのに、これでは無駄遣いではないか。
ただでさえ、ここ最近の王族たちは金遣いが荒く、特にライアンの散財癖が酷かった。きっと今月も赤字を更新し、財務官が頭を抱えるのが目に見えた。
そんなくだらないことを考えていると、ライアンが隣に見知った顔の令嬢を引き寄せた。
ウェーブのかかったピンクゴールドの髪を揺らし、フリルがふんだんに組まれた黄色のドレス姿の彼女は、私を見下ろして勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「そして私は、新たにナタリー・ルイズ男爵令嬢と婚約を宣言する! 皆には急なことではあるが、どうか我々を受け入れて欲しい。必ずや彼女を幸せにし、ウィルメント王国を繁栄させると誓おう!」
彼らのすぐ近くにいる使用人たちからは拍手が送られる。中には涙ぐむ姿も見受けられた。何も知らされずに招待された来賓が困惑する中、舞台上の二人と身内だけが幸せそうだった。
「どうした、エマリネ。驚いて声も出ないか? 自分の胸に手を置いて聞いてみろ。貴様はせっかく生まれ持った聖女の能力をこの国のために活用することなく持て余し、聖女としての役割を放棄している! 婚約破棄するには充分な理由だろう?」
壇上で高々と婚約破棄を宣誓するのは、婚約者であるライアン王太子その人だ。艶やかな金髪をかき上げ、傲慢な笑みを浮かべたまま見下ろす先にいるのは、私――エマリネ・コールマンである。
王城の広間で行われているパーティーは、本来ウィルメント王国の王太子と聖女の婚約を発表する場だった。国内の上流階級の貴族が集まる中、身内の人間だけが満面の笑みを浮かべていることから察するに、最初から仕組まれていたらしい。
結い上げた亜麻色の髪に合わせた赤のドレスは新調したばかりだというのに、これでは無駄遣いではないか。
ただでさえ、ここ最近の王族たちは金遣いが荒く、特にライアンの散財癖が酷かった。きっと今月も赤字を更新し、財務官が頭を抱えるのが目に見えた。
そんなくだらないことを考えていると、ライアンが隣に見知った顔の令嬢を引き寄せた。
ウェーブのかかったピンクゴールドの髪を揺らし、フリルがふんだんに組まれた黄色のドレス姿の彼女は、私を見下ろして勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「そして私は、新たにナタリー・ルイズ男爵令嬢と婚約を宣言する! 皆には急なことではあるが、どうか我々を受け入れて欲しい。必ずや彼女を幸せにし、ウィルメント王国を繁栄させると誓おう!」
彼らのすぐ近くにいる使用人たちからは拍手が送られる。中には涙ぐむ姿も見受けられた。何も知らされずに招待された来賓が困惑する中、舞台上の二人と身内だけが幸せそうだった。
「どうした、エマリネ。驚いて声も出ないか? 自分の胸に手を置いて聞いてみろ。貴様はせっかく生まれ持った聖女の能力をこの国のために活用することなく持て余し、聖女としての役割を放棄している! 婚約破棄するには充分な理由だろう?」
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