身代わり娘の逃走計画
「大好きだったんだな、その人たちが」
「うん、うんっ……!」
春堅は私が落ち着くまで背中を撫でてくれた。冷静になった心は、羞恥心をも呼び覚まして耳元で囁いた。
──初対面の男に、なんというはしたない真似をしてしまったのか。
慌てて離れようとする私を春堅は留めると、両腕で抱きすくめて呟くように言った。
「俺は、お前をその行商人の元へ返してはやれない……でも、お前を旅に連れ出すことはできる」
「春堅?」
「一緒に行かないか?」