身代わり娘の逃走計画
私と春堅──いや董霞様と呼ぶべきか──は国主様の寝室へと場所を移し、お互いの秘密を打ち明けた。
「つまり、あれだろ? お前を生け贄にしたってことじゃないか?」
「私の個人的な恩返しだって!」
私がむくれて、「春堅だって騙したじゃない」とそっぽを向くと、「いやそれは本当に悪かった」と素直な謝罪が返ってきたので拍子抜けした。
それを悟らせずに、私はそっぽを向いたままにしておく。
「暁燕、どうしたら許してくれる?」
「……旅に連れて行って」
董霞様は「もちろんだ」と頷いた。
「新婚旅行にしよう」
「……そちらは検討させていただきます」
「えっ」
私が暗にお断りすると、「そこは頷くところじゃないのか!」と騒ぎ出す。本当に子どものような人だ。
──ねぇ、お嬢様、今なら私、貴女の気持ちがほんの少しだけわかる気がします。
今はもうどこにいるかわからない彼女に、私は心の中で呟いた。
──完──