身代わり娘の逃走計画
──後宮に入れば、目も眩むばかりの宝石や金銀細工の部屋や調度品に囲まれて、大勢の侍女たちに傅かれる生活が待っている。
──毎日のように豪奢な着物を着せてもらえるし、一度袖を通したなら二度と着ることはなく、新しい着物を与えてもらえる。
──食べきれないほどの珍味や美味な料理が、所狭しと食卓に並べられて飽きることも餓えることもない。酒や甘味だってそうだ。
──遊興だって思いのままだ。観劇は好きほど見られるし、好きな時に楽団を呼んで好きな曲を演奏してもらえる。
──とにかく豪奢で贅沢な暮らしを約束されるのだ。一度、後宮に入ってしまえばそんな相手などすぐに忘れてしまうだろう。
──何より、すでに国主である董霞様に約束してしまったのだ。董霞様は敵とみなした者にはそれはそれは恐ろしい方で、敵対者の一族郎党が皆殺しにされたという噂もある。ここで断れば、お前だけではなく儂らの命も危うい。
──わかってくれるな? 莉山や。