魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
階段が見えてきた。
(上! 上に逃げよう!)
けれど、どこまで上がってもまだまだ上れる。
「どうなってるの? 何階まであるのー?」
階段を上りきることを途中で諦め、適当なフロアを飛んだ。
魔族とも幾度となくすれ違ったけれど、箒が速すぎて残像のようにしか見えない。
ぶつからないように飛ぶだけで精いっぱいだ。
無我夢中で飛んだ。
それでも、同じ場所をぐるぐる回っているわけではないなのに、どこまで進んでも廊下が終わらないことだけは理解できた。
「魔王城ってどういう造りになってるの!? めちゃくちゃすぎるー!」
出口らしきものは一向に見当たらない。
「わけわかんな……っと! 何?」
箒が突然ガクッと後ろに傾いたのだ。重しでも乗ったように……
「どうも」
「きゃー!」
振り返ると、イーダの真後ろに魔王が座っていた。