魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
(それにしても、どうして魔女が王女の身代わりをすることになったのでしょうか……)
第一王女を対価として求める旨をしたためた魔王からの返事を届けて以降、人間界へは行っていない。
侍従長には、あれから人間界で何が起こったのかは分からない。
(あの魔女は、ソフィーの娘イーダだと思うのですが……ソフィーは今どうしているんでしょうか?)
イーダとの直接的な関わりはないものの、ソフィーがイーダのことを愛情たっぷりに育ててきたことは知っている。
(ソフィーは一体どんな思いで、自分の娘を魔王の嫁に差し出したのやら……)
ソフィーの様子を自らの意思で見に行くことができない。侍従長にできるのは、ソフィーが呼んでくれるのを待つことだけだ。
それがもどかしかった。
侍従長がソフィーのことを案じていると、儀式の間からイーダと魔王が勢いよく出てきた。そして、唐突に追いかけっこを始めた。
(あーあ、これは早々にバレましたね……)
舞い上がっていたところを突き落とされた魔王に、おそらくやむを得ない事情から身代わりになった魔女……