魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
(とりあえずふたりを止めますか。落ち着くのを待って話をさせるべきでしょうね)
侍従長はふたりの元へ向かった。
『ラーシュ』
(……うん?)
頭の中に声が聞こえてきたのと、箒に乗った魔女が悲鳴を上げながら目の前を通過していったのは、ほぼ同時だった。
『今いいかしら?』
(なぜ今!? 今それどころでは……)
しかし、いつもこういうタイミングでお呼びがかかる。ソフィーの間の悪さは神がかっていると思う。
『少しの時間でいいからお願いよ、ラーシュ』
こっちはこっちで切実そうに訴えてくる。
(ああ、もう! でも魔王様ならどんなに怒ったとしても、怒りに任せて他人に危害を加えるまではしない方だから……)
そういう面では侍従長は魔王は信頼していた。
それに、ソフィーのことが気になっていたのもある。
(ソフィーのほうは手短かに済ませて、急いで戻って魔王様とイーダのことを対処すればばいいでしょう)
侍従長はソフィーを優先することにした。