魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 言葉を発することができないと、うまく説明できない。

 答えの窮したラーシュは、ソフィーから視線を外した。

 そのとき偶然にも目に飛び込んできたものに、ラーシュは『カアア!?』と叫んだ。

「ラーシュ? どうかしたの?」

(あ、あれはどういうことでしょう!?)

 ラーシュは自分の目を疑った。

 ふたりが月の下で夜間飛行している。

 ふたりのことを考えすぎて見間違えたのかと目を凝らしてみても、やはり魔王とイーダに見える。むしろ、魔王とイーダにしか見えない。

(魔王様はどうやって人間界に?)

 状況がさっぱり分からない。

 けれど、魔王の怒りは解けたようだ。

 それどころか、ふたりはとても楽しそうだ。

「ラーシュ、どんな方法でもいいからイーダのことを教えてくれない?」

 ラーシュはカッと目を見開いた。

(最初からそう言ってくれればよかったんですよ!)
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