魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

3.5

 侍従長が魔王城に帰ってきてからほどなくして、魔王とイーダも戻ってきた。

 第一王女そっくりの色だったはずのイーダの髪は本来の色に戻っていた。

 イーダが第一王女ではないと魔王が知ったことが確定したと思っていいだろう。あのプラチナブロンドこそ王族の象徴なのだから。

(おや? それにしてもおかしいですね……)

 先ほど人間界ではキャッキャと箒で飛び回っていたはずだ。

 それなのに、目の前にいるふたりは無言でどうもぎこちない。

「お帰りなさいませ。追いかけっこをされて喉が渇いていませんか? お茶でもご用意しましょう」

「僕はいいから、王女にだけ頼む。近日中に彼女のために侍女を選定してほしいが、今日のところは侍従長が彼女を部屋まで案内して、お茶も出してあげてくれ」

「かしこまりました。では、お部屋までご案内します」

「あっ、でも……」

 イーダが狼狽えながら、魔王をちろっと見上げた。
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