魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
「今日はもう遅いから、明日……そう、明日にしよう! 大丈夫、特効薬を作る約束は忘れてない!」
(おお? いい感じに話が進んでいるではないですか!)
「明日……ですね?」
「ダメかな?」
「だ、大丈夫です! きっと1日くらいなら!」
イーダは胸に手を当て、ほっと息を吐いた。
しかし、やはりふたりは挙動不審だ。
(箒のふたり乗りしておいて、よそよそしいですね。けれど、魔王様は怒っているわけではないし、喧嘩をしているふうでもない……)
「何かありましたか?」
「えっ!? 何もない! 何もないよね?」
「ないです、ないです!」
妙な雰囲気のくせに、息だけは合っている。
「それならいいですが……ところで、寝室はまだ別々でよろしいですか? 急なことで準備が……」
こう尋ねたのは、魔王なら『いや、同室で』と押し切ることなど不可能なのが分かっているからだ。