魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 侍従長の淹れたお茶を飲みながら、イーダは事の経緯を語った──

(可哀そうに。それなら、ますます元の世界に帰してあげなければいけませんね)

 ソフィーだけでなく、イーダのためにもそうしようではないか。

 考えてもみれば、ソフィーが侍従長にとって娘のような存在ならば、イーダは孫娘のような存在ということになる。

「ところで、先ほどまで魔女様と魔王様は人間界にお出かけのご様子でしたが、あれはどうやったのですか?」

「どうやった……あれは、魔王様の口車に乗せられたんです。魔王様に『魔王様と空を飛びたい』ってお願いしたような形になっちゃいまして」

「魔王様にお願いを……?」

(なるほど。魔王様は人間の願いを叶えるという名目でなら、人間界に転移することが可能なんですね)

 魔女に召喚してもらう以外にも、もうひとつ人間界に行く方法があったということだ。もっとも、それは魔王にしか使えない方法なのだが。
< 118 / 227 >

この作品をシェア

pagetop