魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
侍従長の淹れたお茶を飲みながら、イーダは事の経緯を語った──
(可哀そうに。それなら、ますます元の世界に帰してあげなければいけませんね)
ソフィーだけでなく、イーダのためにもそうしようではないか。
考えてもみれば、ソフィーが侍従長にとって娘のような存在ならば、イーダは孫娘のような存在ということになる。
「ところで、先ほどまで魔女様と魔王様は人間界にお出かけのご様子でしたが、あれはどうやったのですか?」
「どうやった……あれは、魔王様の口車に乗せられたんです。魔王様に『魔王様と空を飛びたい』ってお願いしたような形になっちゃいまして」
「魔王様にお願いを……?」
(なるほど。魔王様は人間の願いを叶えるという名目でなら、人間界に転移することが可能なんですね)
魔女に召喚してもらう以外にも、もうひとつ人間界に行く方法があったということだ。もっとも、それは魔王にしか使えない方法なのだが。