魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

1.2

 約20年前、斑紋死病によってマルスドッテル王国の王都は崩壊した。

 ソフィーはあのときのことを未だによく憶えていた。

 王都の機能が麻痺してしまったせいで、斑紋死病とは無関係だったはずの地方にまでその影響は及んだ。

 20年かかって、ようやく王国が立ち直った。

 だというのに、その矢先にまた斑紋死病だ。

 だから、ソフィーも24時間体制で薬を作ること自体は納得することができた。

 けれど、何でもかんでも許容できるというわけではない。仕方ないと割り切れないこともあるのだった。

(製造した薬は、本来であればノールブルク領主の邸宅まで配達すればいいはずだったのに……)

 そうすれば、王宮までは領主が届けてくれることになっていたのだ。
< 12 / 227 >

この作品をシェア

pagetop