魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない
イーダは信じられないようだった。
まさか魔王の移動範囲に制約があるなどと、想像もできないのだろう。
「はい、それだけです」
「だけど、そんなことをしたら疫病は?」
「もちろん魔王様に特効薬を作ってもらってから実行してください」
「そんなズルいことをしちゃっていいんですか?」
「魔王様の特効薬で完治したのち、第一王女に嫁ぎ直してもらいます。それで万事解決ですよ」
イーダはまだどこか信じられないようだ。
『はあ』と曖昧な返事をした。
「誤りは正せばよいのです」
「誤り……」
(どうも反応が薄いですね。もっと喜んでほしかった気がしますが……)
けれど、イーダが元の生活に戻ったあとでソフィーに召喚してもらう機会はいずれ訪れるだろう。そのときにはイーダの笑顔も見られるはずだ。
(それまで楽しみに取っておきましょう)