魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 ぐっすり眠ったせいか、フワフワと浮きっぱなしだった気分は、翌朝になるとそれなりに落ち着いてくれていた。

 それでも、気を抜くと顔の筋肉はすぐに緩んでしまう。

 魔王は意識して顔を引き締めた。

(今日は何としてもいいところを見せる!)

「侍従長!」

「おはようございます」

 廊下で待機していた侍従長はすぐにやってきた。

「今日は忙しくなると思う。王女は起床しているか?」

「はい。どうやら昨夜は睡眠が浅かったようです。特効薬のことが気になってのことかもしれませんね」

(しまった! 慣れないベッドだったしなー。王女にも僕と同じ魔法をかけてあげるべきだった……)

 こんなことでは頼れる男には到底なれないし、彼女の心も掴めない。

(しっかりしなければ!)

「今日中に王女の憂慮は取り除く」

「ぜひともそうなさってください」

 侍従長はやたら機嫌よく答えた。
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