魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

(そんな私が花嫁衣裳に袖を通しちゃうなんて!)

 もっとも、魔王を騙し通して結婚できるはずがないと思っていたけれど。

 禍々しい姿をしているに違いないと想像していた。

(それなのにとんでもない美形で! それで私のことを心配そうに見て……と思ったら、自分に角があることにオロオロし出して……)

 イーダは、自分と同じように魔王が緊張していたことや、自分との婚姻に胸を躍らせていたことに気がついていた。

 そのことには驚きを通り越して、感動すら覚えてしまった。

 その直後に怒らせてしまったけれど。

(本気で怒った魔王様は怖かったー!)

 それでもすぐに機嫌を直してくれて、ふたりで夜空を飛ぶのは楽しかった。

(あんなのデートじゃないの……それで優しく触れられて真剣に見つめられたから、私のほうも魔王様から目が離せなくなっちゃって……それで息を止められて……あー、あー、もう!)

 そうしたら恋に落ちても当然だ。

 仕方がないではないか。
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