魔女ごときが魔王様をダマせるはずがない

 魔王はイーダの耳元に口を寄せると、こそっとイーダに尋ねた。

「……それって、まさか僕に殺されると思ってたんじゃないよね?」

 イーダは噴き出してしまった。

 そこでやっと魔女たちは魔王のほうに目を向けた。

 まるで今までそこにいることに気づかなかったように、ぎょっとしている。

「あの……そちらはどなた?」

「その頭は……!」

 イーダを除く全員が魔王の角を凝視した。

「角が生えてる!」

「えっ、ヤバい!」

 みんなして顔面蒼白になった。

「家族が失礼で、ごめんなさい」

 居た堪れなくなったイーダは魔王に謝った。

 他人の身体的特徴について言及するのはいけないことだとイーダに教えたのは、ここにいる魔女たちのはずなのに。

「いや、こういうのも最近慣れてきた気がするから」

 魔王はそう言って苦笑いした。

「あら? 優しそう……」

「それに美丈夫……」

 イーダは堪らなくなった。
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